1940年代に始まったゲーム理論の研究は、しばらくはミクロ経済学の市場メカニズム分析に用いられるだけであったが、80年代以降は経済学のみならず他の学問にも応用範囲を広げ、今なお発展し続けている。

本書は、日本におけるゲーム理論の気鋭の研究者たちが、経済学、経営学、生物学、社会心理学の各分野における最先端の研究成果をまとめた論文集である。第1章が各章の概説に割かれており、また各論文においてもその内容が基本的な理論と関連づけて記述されているため、ゲーム理論についてひととおりの基礎知識があれば、内容はおおよそ理解できるようになっている。特に、第2章「生物進化とゲーム理論」では生物学にゲーム理論がどのように応用されているのかを、「親による子の世話」や「タカ・ハトゲーム」などの例を用いて説明している。また第7章「社会的ジレンマ研究の新しい動向」は「囚人のジレンマ」等から発展したジレンマに関する最新の研究を、社会学者が数式をまったく使わずに解説している。限られた分野でのゲーム理論しか知らない読者にとっては、経済学者以外の研究者による論文を読んで、そのおもしろさを再発見することができるだろう。また、各章には参考文献が多数紹介されているため、これを手がかりに自分が興味を持った分野をより深く掘り下げていくことも可能である。



ゲーム理論研究の広がりと深さ、そして将来の可能性を知ることができる1冊である。（戸田啓介）



定価：3100円税別



出版社 : 勁草書房 (2002/4/1)

発売日 : 2002/4/1

言語 : 日本語

単行本 : 270ページ

ISBN-10 : 4326502274

ISBN-13 : 978-4326502271