国文学の世界の巨人であり、古事記研究の泰斗でもある西郷信綱氏のクリティカルなエッセイを集めた名著です。この論集は、国文学に関心を持っている人だけではなく、広く大学アカデミズムの世界の住人であれば、一度は読んでおかなければならない一冊と個人的には思います（巻中には、レヴィ＝ストロースやマリノフスキー、ヘーゲルなどへの言及もあります）。私事に及んで恐縮ですが、私自身の関心も国文学とは遠く離れていますが、この本との出会いが「学問」に対する自分の姿勢を大きく変えてしまいました。長く座右に置いて、ことあるごとにページを捲っていた次第です。批評と研究がどう交差しうるのか、あるいはしなければならないのか、そのことを実感として分からせてくれたのがこの本でした。巻末の大西広氏（彼も、著作は多くないのですが、日本美術史の世界では半ば神話的な碩学です）による「解説」も素晴らしく、精読の価値ありです。



余談ですが、表紙に使われているのは李禹煥の絵画です。



なぜ、平凡社ライブラリーがこの本を刷り続けないのか、不思議ですが、今では新刊での入手ができなくなり、古本でも状態のいいものは出回っていません。本品は、そんな中、極めていい状態の一冊。見返しに薄いシミが広がっていますが、そのほかは新品同様の美品です。表紙もグラシン紙で包まれて保護されています。1995年の初版です。写真でご確認ください。



#西郷信綱