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ドミノ倒し

　地方都市・月影市で探偵家業を営む主人公・十村のもとへ元恋人の妹・江上友梨が訪れて「元彼にかけられた殺人の疑いを晴らして欲しい」と依頼します。調査にとりかかった十村は、別の殺人事件の被害者に今回の被害者同様足底に「X」の印がつけられていることを知ります。これは連続殺人事件？　月影市の警察署長はたまたま十村の幼なじみでしたので、彼からいろいろ情報を得る十村ですが、どうやら署長は月影市には未解決事件が多いことを訝しく思っているのです。それらを調べるうちに今回の殺人事件と過去のいくつもの事件がつながっている様相を呈ます。十村が依頼された事件、二年前のフリーター男性が殺された事件、三年前の幼女誘拐殺人事件、四年前の男子大学生の自殺と、十村は4つの死亡事件にまで首を突っ込むことになります。…

最後の最後までこれらの事件の犯人の手掛かりは得られず、どうやってオチをつけるんだろうと読者はやきもきさせられるのですが、意外な犯人像が明かされます。



悪の芽

いじめをきっかけに社会に適応できなくなった中年が自棄になったって起こした無差別殺人事件。犯人は直後に自殺します。 主人公はエリートサラリーマンで銀行に勤務する安達周。彼は事件の犯人がかつて自分がいじめのきっかけを生み出してしまった同級生であることに気が付き、そのいじめが凶悪事件の火種となったのではと思い悩み、パニック障害にまで至るのでした。そして犯人の動機を探るべく関係者に話を聞いて回るのです。犯人の両親、小学生時代にいじめていた中心人物、職場の人々、そして犯人があこがれていた女性・・・・。

一方で犯行現場で動画を撮影した大学生はネット上に掲載し時の人となり、プライベートを暴く行動をエスカレートさせます。また被害者遺族たちも犯人の両親に莫大な慰謝料裁判を起こすに及びます。　この過程で読者は犯罪は許される行いではことは理解しながらも、背景にあった現実に同情する気持ちが大きくなっていくのです。ここが貫井の巧みな誘導です。明かされる犯人の真の犯行動機に、日常社会に潜む真の闇が提示されます。