1991年　326P

片岡千鶴子
キリシタンの町長崎と女性たち
長崎は町建ての始めからキリシタンの町であった。長崎聖堂を創建した向井元升はその著『知 恥篇』に「きりしたんさかむなりし時の世のありさま、...人には南蛮名を付けてよび、歳月時節 の風儀も、冠婚祭葬の礼儀も、賓客朋友のまじわりも、道徳節儀の心操も、飲食衣服の調いも、南 蜜様を用いさせたふとませ、国家の政道をすすめ、人の成敗をさたし百姓耕作の事まで指図をな す...」と、キリシタンの町長崎の様子を記している。目的はキリシタンを非難することにあった が、非難するためにキリシタンの様子を説明しようとしても、このように言わざるを得ないほど、 長崎はキリシタンの色こい町であった。何よりも大きな特色は「道徳節儀の心操」、つまり人とし ての生き方そのものがキリシタン的であったということであった。

長崎の町は鎖国時代に世界に開かれた唯一の窓口として意義付けられることが多いが、むしろ 日本に伝えられたキリスト教の信仰が日本人に真実に受け入れられ、証しとされた地としてこそ 価値付けられると思う。

本書に取り上げられている大村純忠夫人おえんさまに代表されるキリシタン女性たちは神を信じ、愛することが人間にとって最も大切なことであることを知り、その証として隣人たちを大切 にし、ついには殉教によって神への愛の証し人になった人々も多い。

本書にはさらに長崎市内に女子教育の学校を創設した四人の女性教育者と、祈りと奉仕に生涯 を捧げる二十近くの女子修道会の活動を紹介しているが、これは長崎の地にキリスト教的価値観 が精神的基盤として受け継がれていることの証しであろう。教育も修道会もともに人間に対する 愛の業だからである。本書が長崎に住む女性たちに真の愛のありようを考える機会となることを 期待するものである。
。

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小黄ばみ。小口ややシミ。40551

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。