今日、おおくのひとはマルセル・デュシャンの文章があるのを知って驚くであろう。『階段をおりる裸婦』の画家が著 名だったのは、とくに現代芸術の普及にはたした役割のためであり、さらには一九二三年に画家としてのすべての活動を やめチェスに没頭していったという奇妙な経歴のためであった。
じじつ、デュシャンが「書き手」として知られるようになったのは、一九三四年、『その独身者たちに裸にされた花嫁、 さえも』につけた覚え書をおおやけにしたときが最初である。しかし、このことはアンドレ・ブルトンをのぞいてはだれ も気づかなかった。ブルトンはもちまえの洞察力でその重要性をいちはやく予感していたのである。『緑の箱』と題した この覚え書の発行部数は内々のごくかぎられた数にとどまっていたため、デュシャンの「文学的」仕事が最終的にすべて 大衆の眼にふれるようになるには、一九五八年にテラン・ヴァーグ書店からでた最初の文集『マルシャン・デュ・セル』 (1)をまたねばならなかった。
そのご、すでに十七年たっている。そのうちの十年間、デュシャンは覚え書や警句や評論のたぐいをあちこちに書き つづけた。これらは一九六六年にでた『不定形で』(白の箱)のような古い文章とともに、この再版のなかにおさめられている。
内容をみればあきらかであるが、本書には、マルセル・デュシャンがかつて出版したテクストや、あるいはとくに出版 する必要があると考えられたものだけが収載されている。それらは『マルシャン・デュ・セル』の場合とほとんどおなじ ように、四つの章にわけて編集された。

外箱小傷、小汚れ。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。
また複数冊ご購入いただいた場合同梱発送を予定しております。ご理解のほどよろしくお願いいたします。