1995年　127P　

はじめに

器というものを大きく分けると、皿・鉢のように物を盛る 器と、壺・瓶のように液体を容れる器の二種類になる。内容物の性質やその用途から、器形の基本を変えられない皿・鉢に対し、必要な量さえ容れられればよい壺や瓶は、形に関してそれほどの制約を受けない。このため、壺や瓶は、作る者 がその思いを自由に盛り込むことができるし、使う者も自分 の趣味や嗜好を反映させやすいものとなっている。

こうして、はるかな昔から、壺や瓶、とりわけ施には、物の形を借りた象形瓶、色や文様を自由自在に表現したものな ど、さまざまな形が創り出されてきた。さらに、素材にも多 種多様のものが用いられている。

香油瓶や香水瓶もその例外ではない。貴重な香油や香水を容れるこれらの器は、形を拘束されないうえ、それを作るた めの経済的な制約もないので、人びとの愛着心がいっそう強く映し出される。

数千年の昔より、香油瓶や香水瓶が愉悦の香りを漂わせて 人の心をくすぐりながら、それぞれの時代の空気をたっぷり 吸い込み、その器形に時代時代の好みをみごとに取り込んで、 人びとを魅了し続けてきたのも理由のあることであった。

瓶の中に納められた魅惑の香りにも増して、香水瓶は愛く るしく魅力に満ちた装いで私たちの前に出没する。その歴史には、変転してやまぬ姿を追いかける面白さがあるのである。

本書は、5000年にわたって千変万化する香水瓶を一堂の下に集めて、時代の流れをたどりながら、そのヴィヴィッドに変貌する姿を紹介しようとする一つの試みである。

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小汚れ。ページ小黄ばみ、数ページ蛍光ペンで線引きあり。ご理解の上、ご入札ください。
もちろん読む分には問題ありません。9461