1995年　厚さ約6㎜　価格表付属

ギャラリー堂島開店によせて

私の親しい友人であるセントラルギャラリーの嶋田健治さんが、今回、独立して、現代工芸のあたらしい画廊を、大阪の堂島浜に開くことになった。嶋田さんは、昭和四十九年、セントラルギャラリーに入社以来、二十一年間にわたって日本の現代陶芸を中心とした美術作品を幅ひろく取りあつかい、数多くの優れた作家 の個展やグループ展を企画し、実現してきた。その中には、松井康成、清水卯一、西岡小十、中島宏、川瀬竹春、川瀬満之、鯉江良二、鈴木三成、小川哲男、小野寺玄、夏目有彦など、現在、日本の陶(工)芸界を代表する傑出した作家たちが顔をそろえているのである。しかもそれだけではなく、嶋田さんは、ほとんど無名に近い有能な作家を発掘しては、しばしば作品発表のための場を提供しているのであって、仕事の良否を見きわめるその眼の確かさと鋭さは、まさに無類といってよい。私も、嶋田さんのおかげで、ずい分多くの卓抜な作品を眼にすることができたが、セントラルギャラリーほど充実した現代陶芸の展覧会をつぎつぎと開いてきた画廊は、百貨店の美術部を別とすれば、大阪はもとより、東京にもそう多くはないと思う。

嶋田さんは、セントラルギャラリーに入社したときには、もちろん陶芸については素人だったが、小山富上夫、荒川豊蔵、加藤唐九郎といったまことに得がたい先達たちとの出合いをつうじて、急速に知識と眼識 を深めていったようだ。おそらくそこには、もちまえの感のよさに加えて、人一倍心な勉強と努力があったにちがいない。

しかし嶋田さんは、自分のそういう知識や眼識をすこしも人にひけらかすようなことはない。いつも謙虚で、温和で、優しくほほ笑んでいる。私は多くのアート・ディーラーに接する機会があるが、嶋田さんほど気楽につきあえる相手は余りないように思う。セントラルギャラリーが幾多の優れた作家たちの展覧会を開 くことができたのも、嶋田さんのそういう人柄のよさに負うところが大きいのである。

新画廊の開店を記念して、嶋田さんは、これまで親しくしていた作家たちの作品展を開くというが、どのような力作があつまるか、まことにたのしみである。今後、嶋田さんが、ここを拠点として、日本の工芸界に新風を吹き込むような一層めざましい活動を展開することを、切に期待したい。

(京都大学名誉教授)
乾由明

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小汚れ。ページ小黄ばみ。 もちろん読む分には問題ありません。27781

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。