昭和58年　398P

序に代えて
先師金田一京助先生曰く、表現漸移相の国語学的研究、これを私は、「おはす活用考
活用表 現論」というふうに読む。 活用表現論は、言語の共存と表現の移という立場から、動詞の通時的 研究を試み、同根の動詞の異なる活用共存の謎に取り組んで、上下一千年の文献から得た活用諸形 態の、記述文法的な記録であるが、単なる形態的処理にあきたらず、意義との関連性に目を向け、一 つの動詞が一語両活用あるいは三活用であるためには、自他による別のあること、時代による別 のあること、3表現内容による別のあること、男女による別のあること、同地域による別のあるこ と、などを目安にして体系づけようと試みたものである。 本居春の形態による段の処理を踏ま えながらも、これに表現をまとわせた論に注目するとともに、多年に亘る飽くなき渉猟と、幾万に上 るカード作製の不屈の工作が積もり積もってこれを成した努力を多とするが、これが学問上の光彩を 放つに至るまでには、なお一層の精進と周到な用意がなされなければならない。その成果を将来に期 待するものであると。

外箱傷、小汚れ。ページ小黄ばみ。