昭和46年　

東京にもせめて新宿御苑ぐらいの公園が市中に三、四か所ぐらい、それに隅田川畔や東京湾沿いに、リバーサ イド・パークやシーサイド・パークのようなものがあればといつも思う。

美しい緑の大木でカバーされていたかつての武蔵野、独歩や芦花や花袋が好んで遊び、その美しいすがたを認 ったそのかみの武蔵野も、今では殆ど見られなくなった。稀に残っているものがあっても、極めて影薄いものと なってしまった。明治も遠くなりにけりである。

著者はさきに「東京の庭』を上梓した。本書は実にその集大成とも見るべきもの。目と足とカメラでその姿 をとらえ、その美しいかずかずを払い、その哀愁をともに敷き、ともに悼まんとする一篇の叙情写真詩でもある。

本書はなるべく造園的観点のみに篭城することをさけ、巾広い視野に立って撮影し解説することに努めた。 史的文学的な美しさ、詩情溢れる情景、絵画的な構成美などの描写やその表現 を入れることにした。 幸い本書が多くの人々の趣味や教養の対象となったり、あるいはエキスパート諸君に対しても、少しでも滋味 を提供するようなことにでもなれば、それは著者としてもこよない歓びである。また東京の若い恋人たちのため 明日のデートやハイキングのためのブルー・ガイド・ブックとして流用されるようなことにでもなれば、それは またそれで著者はけっこう楽しいのである。
著者

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。外箱傷、小汚れ。もちろん読む分には問題ありません。24321

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