昭和46年　272P。

まえがき
磁器の創製はよほどむずかしかったらしく、日本では江戸初期の元和二年に 帰化韓国人の力を借りて、有田ではじめてこの偉業をなしとげることができた。 これは隣国中国よりも数世紀遅れたことになるが、それでもなお西欧諸国より 百年も早かったのである。

やがて中国では、明朝と清朝の争いが起こり、国内は戦乱の渦にまきこまれるので、景徳鎮窯業もまた衰退のやむなきにいたった。時あたかも最盛期を迎えたわが有田の窯業は、この機に乗じて世界を制覇し、半世紀以上におよぶ黄金時代を現出することとなった。やがて十八世紀の初頭になると、西欧諸国が 次々に磁器の創製に成功するが、このときいずれの国も、まず第一に日本より 輸入した赤絵の模造品を造っているという事実は、当時、日本の赤絵磁器がい かにもてはやされたかを如実に物語ってくれているのである。

さて私は、昭和四十五年夏、雄山閣より『古伊万里染付皿』を出版し、この 素晴らしい初期有田磁器の一端を紹介したが、立体的な器に関する系統的な著作を要望する声も多いので、このたび改めて徳間書店より本書を刊行する運び となった。

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