昭和46年　155P

はじめに

近年、科学技術のめざましい発達によって多種多様のものが機械で大量に生産され、私たちの生活がたいへん便利になったことはありがたいことです。しかし、機械でつくられたものは画一的で個性的な味わいというものに欠けています。 それにひきかえ芸術や美術作品というものは、作者が一つ一つに創意と情熱を傾けてつくったものですから、人間味と個性が豊かに表わされています。物質文明が進めば進むほど、人の心が芸術的なものに関心が寄せられるようになるのも当然といえるでしょう。

日本はアジアの東端に位する島国であるために文化の芽ばえは必ずしも早かったとはいえませんが、ひとたび先進国の文明に接すると、それらをたちまち吸収し、急テンポの発達 をとげました。美術もその一つで、それが世界的にすぐれているのも、数千年の昔から私たちの祖先が積み重ねてきた努力の結晶なのです。

ところで日本の美術は、少年・少女や若いお母様がたには親しみにくく、またむつかしいものとされてきました。しかし美術を知らなくては日本の美しい文化を理解し、教養を高めることができません。この本では、時代の流れにあわせて、 大昔から現代に至る日本美術のあらましを述べることにしました。また、複雑な内容のすべてにわたって詳しく説明することは、かえって本筋をつかみにくくしますので、これだけはぜひ知っておいてほしい、これだけ知っておればまず十分と思われることだけをまとめました。 そのような理由から、この本ではまず美術品のつくられた当時の社会と文化を述べ、次にその時代の美術について代表的な話題と作品を選んで解説し、最後に、さらに研究を深めるための手びきとして、必要と思われる問題を取りあげて詳 しく説明を加えました。

執筆者には東京国立博物館その他の先生で、少年・少女の美 術教育に豊かな経験をもっておられる方々をお願いしました。この本は、その体験を生かし、新しい構想のもとに書かれたものです。

毎日新聞社

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小汚れ。背表紙やや色あせ。ページ小黄ばみ。もちろん読む分には問題ありません。26471

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。