平成21年　85P

緒言
- 愛知縣新城市にある臨済宗天龍山德運寺所蔵の古寫經の一部は昭和六十三年に鳳來町(現新城市)の指定文化財に指定され たが、あらためて國際佛教學大學院大學フロンティア事業の一環として、文化財未指定分も含めて、同寺所蔵の古寫經すべて について調査研究した。その成果が本目?である。古寫經は全體で百三十九巻、他に名稱不明の二つの断簡がある。 調査・研究の結果、概略、次の事實が明らかにされた。

第一群は、平安時代末期に書寫された古寫經で、二十六卷。一部の經典に奥書があり、書寫・校訂の年代(一一七〇年代) が知られる。

第二部は禅尼の追善供養のために書寫されたと考えられる『摩訶般若波羅蜜経』などの四部の大乘經で、合計二十七巻。こ れに『妙法蓮華経』を加えた五部が天臺宗の影響のもとに平安時代以降盛んに書寫されたことと深い關係があると思われる。 書寫年代の記載はないが、室町時代と推定される。

第三群は、奧書によって、德運寺が所屬する方廣寺派の僧が室町時代後期に書寫したことが知られる六十三巻。 以上の他にも種々の寫經が存在するが、中でも興味深いのは、南宋・圓覺羅院版(思溪藏)の斷簡七枚で、その中の一枚に 朱文印「甲州加賀美法善寺藏經」が捺されている。

第一群と第三群はそれぞれ一切經の一部であったと考えられる。第一群は遠江國の源朝臣遠平夫妻が發願して書寫した一切 經で、遠平は筑前權守と記されている。この人物について他に史料が見出されな いというが、その地位から考えると同等の資
力を有する人々は決して少なくなかったはずである。その意味では、この奥書が將來重要な史料として評價されるようになる のではなかろうか。
第三群でも奥書に書寫者の名を記すものが多い。その詳細が一覽表に整理されており、將來重要な意義を見出すことがある であろう。第三群の古寫經はもとは德運寺の本山である方廣寺の所藏であったのであろう。方廣寺では室町初期に一切經の書 「寫事業が行われたことが知られるが、すべて失われたために、室町後期になって再び書寫事業を興したのであろう。しかしそ れも焼失し、わずかにその一部が徳運寺に殘ったと考えられる。

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります.。表紙小傷。もちろん読む分には問題ありません。42501新

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