2000年　79P

ごあいさつ

日本民俗学発祥の記念碑とも言われる『遠野物語』が、明治四三年に柳田國男によって著されてから八○余年。遠野では「柳田民俗学の里づくり」が着実に歩みつつあり、加えて将来に向けての壮大なロマンとも言える「’92世界民話博覧会」が開催されており、まさに文化の花香る「民話のふるさと」の夢爛漫であります。

柳田國男は、全国津々浦々へ自ら足を運び、民間伝承を通じて庶民の文化を明らか にする民俗学を、昭和九年に『民間伝承論』で発表しました。この中で柳田は、「一 国民俗学」の確立を提唱し、普遍的な人間学の追求を説いたのでした。

『遠野物語』によって全国に知られるようになった遠野市及び遠野人は、今後さらに『遠野物語』の理解を深めながら、郷土の文化、歴史、先人の思想、生活などを知り、よりよい町づくりを展開しながら柳田学を実践していかなければならないと痛感しています。

今回の特別展は、日本人の幸福を願い、日本人の起源を求め続けた柳田國男の生涯を振り返りながらその人間像を探るとともに、『遠野物語』誕生の意味を改めて考える機会になれば、と開催するものです。

本展の開催にあたり、格別のご高配・ご協力を賜りました関係各位に、厚く御礼申 し上げます。

平成四年七月
遠野市立博物館長 白金久四郎

柳田国男【やなぎたくにお】

日本民俗学の樹立者。兵庫県生れ。旧姓松岡。東大政治科卒後、農商務省に入った。かたわら田山花袋、島崎藤村らと交友。海外新文学を紹介し抒情派詩人として知られたが、30歳代半ばごろ文壇を離れ民俗学に進んだ。1919年貴族院書記官長を最後に官界を去り、朝日新聞論説委員などを勤め、1932年辞職、その後は民俗学に専念。民間伝承の会、民俗学研究所を設立した。《後狩詞記(のちのかりことばのき)》《遠野物語》《海南小記》《蝸牛考》《桃太郎の誕生》など著書が多い。《定本柳田国男集》がある。1951年文化勲章。井上通泰は兄、松岡映丘は弟。

遠野物語【とおのものがたり】
柳田(やなぎた)国男の著書。1910年刊。現在の岩手県遠野市の民間伝承を土地出身の佐々木喜善(きぜん)から聞書きし、神、妖怪、年中行事、家の話などに整理配列したもの。1935年増補版を刊行。のちの柳田民俗学に発展する可能性を含む初期聞書きの一つ。

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小汚れ。ページ小黄ばみ。
もちろん読む分には問題ありません。38161

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。