平成11年　63p

ごあいさつ
中林竹溪(一八一六~六七)は、尾張を代表する文 人画家竹洞を父として、京都に生まれました。幼い頃 から画才を発揮した竹溪は、父の期待を一身に背負い、 父得意の中国風山水図の習得に励みます。しかしやが て竹溪は、さまざまなジャンルの絵に挑戦します。そ の過程で、身近な風物に慈愛の目をそそぐという竹溪 の個性が、次第に明らかになっていきます。中年以降 の竹溪は、父の画風に立ち返りつつ、清新な文人画や 叙情あふれる風景画の逸品を描きました。
竹溪にとっての父とは、伝統そのものでした。 の画風の変転は、伝統と個性、そして時代との
係という永遠の課題に、正面から取り組んだ軌跡とい えます。しかも、竹溪が晩年に到達した画境は、幕末 の文人画家の中にあっては、特筆すべき完成度を示し ています。
今回の展覧会は、従来名のみ著名ながら取り上げら れる事の少なかった竹溪に焦点を当てる、初めての試 みです。作品をとおし、生真面目に現実にとりくんだ 画家竹溪を、再評価していただければ幸いです。
平成十一年九月
名古屋市博物館

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