昭和51年　471ページ　部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。

はしがき
平賀源内は、多芸多才の人で、活動範囲もはなはだ広い。本領は本草・物産学の学者にあったが、その技術 家・企業家を兼ね、しかも西洋の博物学ないし自然科学の知識や技術に強い関心を示して、それらの導入・紹介 に努めた先駆者でもある。そのうえ、当代の通人的文人として、戯作・狂文・浄瑠璃を書き、洋風画にまで手を 延ばしたが、これらの分野においても並々ならぬ力量を発揮した。 エレキテル製作がよく示すように、彼こそは 時代に先がけた鬼才であり、人の意表をつくようなことを好んでした、やや風変わりな才物でもあった。それだ けに当時から世に迎えられて名声がすこぶる高かったが、この傾向は、今日にいたってもなお衰えない。しかし、 その割には研究書・研究論文のたぐいが多いとは言えず、彼の人と業績には、依然未開拓の分野が少なくないよ うである。もっとも部分的研究、または国文学の立場よりする研究はかなり進んでおり、たとえば富成喜馬平、 尾藤正英、本田康雄、近石泰秋、浜田義一郎の各氏によって、それぞれの方面における優れた研究がなされてい る。一方、包括的・全体的研究としては、水谷不倒氏が、明治二十九年に刊行された『平賀源内』(「偉人史叢」六) と、それ以前に出版の同題名の著書「少年文学」二十八)に、まず指を屈せねばならない。森銑三氏は、これらを発 展させた形で伝記を主とした論文「平賀源内研究」 (昭和三年)を書かれ、それを論文 「新資料を通して見たる平 賀源内」(昭和十五年、のち「平賀源内雑爼」と改題)によって補足された。香川県の地方史家岡田唯吉氏も、小冊ながら し着実な伝記的著書『職 平賀源内翁」(昭和九年)を公にされ、また野田寿雄氏は、むしろ源内論に主眼をおいた 著書「平賀源内の人と生涯』(昭和十九年)、論文「風来山人論」 (昭和三十年)を出され、暉峻康隆氏は、年譜を含ん

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