1996年　143P

あいさつ

陶磁器という言葉があるように、陶器と磁器はしばしば一括して表されています。しかし、陶土と磁土は、造形の素材として、成形や焼成という工程の中で、全く異なる性質を示すものです。

特に磁土は陶土と違い、成形上に特殊な性格をもっており、美術の一分野として磁器を考える場合、様々な困難な問題を投げかけてきまし た。ところが近年、磁器を用いる作家が増加し、興味深い制作を見せるようになってきています。

一つは、実用性を持たない純粋な立体造形としての作品が、様々な技術的困難を乗り越えて直求されている点です。二つめは、伝統的な環境の中でも、フォルムに新しい感覚を盛り込もうという努力がいろいろなされていることです。また現代の建築、生活環境の中で新しい実用性を追求しようと、食器・文房具などの分野でも多くの作品が見られるように なりました。

こうした中で、成形上の困難さが、かえって強い個性的なフォルムに昇華され、シャープで強い光沢を発する磁器独特のフォルムとテクスチャーを持った、興味深い作品が数多く造られています。また、フォルムのみならず、色絵磁器と称される独特の歴史を持ってきた分野でも新しい試みが行われています。それは時として独自に、時として新しいフォルムと連動して現れ、これまでの概念にはおさまりきれない新しい感覚と様式を備えてきています。

この展覧会では、そのような新しい磁器の動向を幅広く紹介し、将来への展望を探ろうとするものです。

本展のために、貴重な作品の貸与を惜しまれなかった所蔵家、作家 の方々をはじめ、多大なご協力を賜りました関係者各位に対し、深く謝意を表します。

1996年9月
東京国立近代美術館長 西崎清久

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小汚れ。ページ小黄ばみ。もちろん読む分には問題ありません。26721

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。