昭和59年 厚さ1㎝程度

ごあいさつ
昭和58年4月、室町水墨画の巨匠雪村の里帰り展でオープンを飾った三 春町歴史民俗資料館は、皆さまのご好評を賜わり、ここに開館2年目を迎 えました。
今春の特別展は、 「みちのくの古人形 三春人形とその周辺」 と題し て、数多い日本玩具のなかで、張子人形中の傑作といわれ、独特の地歩を 築いた三春人形を中心として、類似の系譜をもつ福島の根子町人形、 仙台 の堤人形などのすぐれた古人形を展観することになりました。
三春は、古くから三春駒、 三春張子などの玩具の里として知られ、 幾度 か盛衰の歴史を経ながらも、連綿として能くその伝統を受け継いで来てい ます。
しかし、ここに展示した古人形類は、父祖の血に連なる庶民の心を見事 に映し出した絶妙な美しさを見せてくれます。 それはまさに、 大きな驚き と感動であり、そのほとんどは、かつて町民の眼に触れることができなか ったからです。
このたびの展観は、 所蔵家各位のご理解とご協力によって、 色濃く影響 し合った根子町人形、 堤人形たちと連れだって、 三春人形の一大里帰りが 初めて実現したものです。
これら、風土を同じくするみちのくの古人形たちに接して、その発祥の 必然性や、 相互の影響などを探りながら、庶民の生活に根ざした心温まる 美しさを、 十分味わっていただきたいと思います。
とき、あたかも日本一の滝桜をはじめ、 町を埋めて桜花爛漫、 花と人形 と、こんなにも美しい遺産を残してくれた祖先たちに、心から感謝せずに はいられません。 そして、 この三春が、ゆかしい人形の里として、父祖の 心と職技を継承し、よりよい町づくりに寄与できることを望外の喜びに存 じます。
本展観を開催するにあたり、ご繁忙のなか企画指導に当たられた橋元四 郎平氏、俵有作氏 薗部澄氏ら諸先生方の絶大なご尽力に心から感謝申し 上げますとともに、玉稿をお寄せいただいた大村三良氏、 関善内氏および、 貴重な作品を快くご貸与下さった芹沢銈介美術館、 日本民芸館をはじめ、 所蔵家の皆様、並びにご協力いただいた関係各位に対し、厚く御礼申し上 げます。
三春町歴史民俗資料館長
松本 登

表紙小傷、小汚れ。ページ小黄ばみ。もちろん読む分には問題ありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。