1994年 247ｐ

ごあいさつ
ナタ彫りの木彫仏で知られる江戸時代初期の遊行僧円空が亡くなって、今年は三百年に あたります。これを機会に、生命力と慈悲に溢れた円空仏の優品を一堂に集め、その希有 な一生と業績をたどります。
円空は一六三二年美濃国(現在の岐阜県)に生まれ、若くして出家。三十四歳の頃、生 涯十二万体造像の悲願を立て、諸国遊行の旅に出ました。その足跡は、北海道、東北、関 東、中部、近畿地方などに及び、各地に数多くの”円空仏”を残しています。そして六十 四歳の時、かねての念願通り衆生の救済を願いながら食を断ち、即身仏入定を遂げました。 それはまさに仏法実践の一生でした。

旅先で手に入れた木片を利用し、荒削りに刻まれた円空仏は、他に類を見ない独創性と 深い精神性に支えられ、わたしたちの魂を打ちます。現在全国各地に残る円空仏は五千体 近くにのぼり、今でも村の小さな祠にまつられ信仰の対象になっているものも少なくあり ません。
本展は、各地に残る円空仏のなかから代表作約二百三十件に書、絵画など関係資料を加 えて構成、生涯慈悲の心を貫いた円空の人柄と、無欲無心の芸術に迫ろうとするものです。 開催にあたり、ご尽力いただきました関係各位にあつくお礼申し上げます。


朝日新聞社

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