1995年　厚さ約0.8センチ

ごあいさつ
菅野圭介が画壇に彗星のように登場したのは、1937年(昭和12) の独立美術協会展でした。 このとき、 それまでまったく無名であった彼の作品 《フランダース古城》 や 《ノルマンデ 一の秋》の画面にただよう不思議な香気が、 児島善三郎、中川紀元といったベテランをは じめ、多くの若い画家たちの注目を集めたのです。 わが国の洋画壇がひさしぶりに迎える 真正な浪漫主義の画家であったといえるでしょう。
菅野圭介は1909年(明治42) 東京の生まれ。 少年のころから画家に憧れていましたが、 1935 年(昭和10)にヨーロッパに渡り、 グルノーブルに住む画家ジュール・フランドランを訪ね て教えを受け、翌年の秋に帰国しました。 時代は日中戦争から太平洋戦争へと急速に苛酷 さを増していくさなかでしたが、菅野は独立美術協会に出品をつづけ、43年には同会の会 員になりました。戦後は、 いちはやく開かれた新興日本美術展、 日本国際美術展、現代日 本美術展などで活躍し、のちには神奈川県葉山にアトリエを建てて制作に専念しましたが、 1963年(昭和38) 病のため、53歳の早すぎる死を迎えました。
菅野圭介の作品は、単純化された独特の色面で構成され、そこに、ある種東洋的な雅趣 や浪漫的な詩情がうかがえます。そしてそれは、今日でもけっして古びてしまってはいな いし、 油絵の日本化という私たちの近代洋画の問題についても、示唆するところが少なく ないと考えられます。 本展覧会は、そうした菅野圭介の画業を、 初期から晩年にいたる油 彩画を中心にした作品約130点によって回顧するものです。
この展覧会を開催するにあたり、多くの方々からありがたいご協力をいただきました。 ご遺族のご理解にたいし、また貴重な作品をこころよく出品してくださった美術館、 所蔵 家各位のご厚意にたいして、ここに心から謝意を表するしだいです。
1995年9月
平塚市美術館
読売新聞社

表紙小傷。背表紙やや色あせ。もちろん読む分には問題ありません。

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