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明治十一年新政府が産業立国、貿易振興の術品を盛んに輸出、根付も例外ではなかった。これが混乱の原因となり、業者の流通市場で新 出用の根付と古い根付が売買され始めた。一方で伝統の存続を模索した一部の根付師たちが精 な美術根付を作る。
流れ、今日この頃は古美術の価値観が激変し、公立博物館に大正時代、私設美術館には昭和 ●のが並んでいる。 「骨董」とは室町時代以前のものに限るとの決まりが聞けなくなった。ま 古道具の区別もなくなり、なんでもかんでも古ければ骨董と呼ぶ。
古美術店や骨董市で見かける根付は、昭和敗戦後に新規参入した輸入根付と、欧米人の嗜好 した根付様の小型彫刻である貿易物、蒐集の目的である本筋の伝承根付と、三者三様の区分が 美術根付は数が少ない。
ものの好みは人夫々。集め方には特にこうしなければならないという決まりはない。簡単に数が集 まる収集は手軽で楽しいが結果が良くない、根付は選択が第一条件である。ならばどんな根付を目標 に蒐集すれば良いのか、返答はこれから登場する根付が致します。
続く話は骨董根付と美術根付に限定し、題して「根付の魅力」。
そもそも根付は生活用具だから使うときに、帯の下をくぐり易くする為の工夫がある。その知恵は、 一握りの大きさで出っ張りがない、小さい形の制約の中に納まるのが本来の根付、これが蒐集の基本 になる。が、実用道具の常として古根付の殆んどは安物、しからば蒐集に値する根付はどうなのか、 その判断を可能にするのが幕末明治の古書、これは文体が古く漢字が多く言外に含蓄がある、難読難 解で読みづらく、しかも参考資料になるのはホンの一部に過ぎない。しかしその中に根付意匠のタネ がある。根付の魅力を読み取る種明しの一助にと、近世の歴史から根付に関わる話を拾い上げ、更に、実際に見たこと、聞きかじった話を薬味に加え綴り合わせた「虎の巻」。


表紙小傷、小汚れ。

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