昭和62年　216P

まえがき

幕末、国家存亡の危機に直面しながら、政治の中枢に立つ幕府の閣老等は、何の対策もなく、只空しく手をこまねいて傍観するのみであった。

ことしあらばくにあるひともやまだもる そばつににたりうれはしのよや

と嘆じ、閣老頼むに足らと痛憤するほど憂国の至誠に、象山の心は燃えていたのである。

こころみにいざやよばなむやまびこの こたへだにせばこるはをしまじ

日本の国威を発揚するためには如何なる努力も厭うところでないという、その強い気魄は、この歌に依っても窺知することが出来る。そしてその生涯を国事にささげた象山の偉業は、今もなお燦として輝いている。

佐久間象山

識見高邁なる幕末の開国論者。始め儒学を、 ついで西洋砲術を修めて名声高く、海舟や松陰など維新の英才を、その門下に輩出。米艦再度の渡来によって国論沸騰のさい率先開国を唱え、松陰の密航事件に連座して下獄。のち幕府の招命を受けて騒然たる京都に上り、時勢に奔走中、刺客の兇刃 に斃れた、偉丈夫の生涯を克明に描く。

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小汚れ。天部しみ。
もちろん読む分には問題ありません。33201

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