平成15年　厚さ約8㎜
　
序文

古来より石見国一宮として朝野の篤い信仰を集めてきた物部神社は平成25年に千五年を迎えます。

この千五百年記念事業の一環として、本殿の改修工事に着手し、平成14年10月天皇陸下からの幣帛料を賜り、正遷座祭を斎行できましたことは、皆様方の御協力と御殿の場としております。

そもそも物部神社の歴史は毛利・尼子の銀山争奪戦に始まり、天領である石見銀山領の関わりの中で盛衰を繰り返し、さらに近代では維新の胎動の中、勝海舟や福羽美静などの信仰を受け、当時の宮司金子有卿は神職千年以上奉仕の功績により男爵の称号を受け、貴族院議員として、また宮中お歌所で活躍されました。

物部氏初代“宇摩志麻遅命”の御陵を背景に聳え建つ本殿は、県下では出雲大社に次ぐ規模を誇り、春日造りでは全国最大級の大きさであり、幾多の戦火に遭ながらも、宝暦三年に再建され、その後文化13年、安政3年の大規模修繕工事を経て、現在島根県の文化財に指定されております。昭和45年には屋根銅板葺替工事を、さらに平成元年に千木破損に伴う保存修繕工事を、そして、この度の回廊を中心とした修繕工事を、島根県並びに大田市の補助金を得て完工することができました。

また工事に伴い、本殿の内陣・屋根裏など本殿に関する調査を実施し、この『物部神社本 殿保存修理工事報告書』を刊行することができましたことは、今後の物部神社の価値を末永く伝えていくための貴重な資料となると考えております。

物部神社本殿修理工事の指導・助言、さらには本書の監修・執筆まで携わっていただきました元奈良国立文化財研究所室長細見啓三先生、また古文書の調査・整理と執筆に携わっていただきました島根大学法文学部助教授小林准士先生には、多大なご尽力を賜わり誠に有難うございました。さらに当初から御指導と御協力をいただいた大田市・大田市教育委員会をはじめとして、偏に皆様方お一人お一人の御協力の賜と紙面をお借りし、深謝申し上げるものであります。

平成15年3月吉日

物部神社
もののべじんじゃ

島根県大田(おおだ)市川合町に鎮座。宇摩志麻遅命(うましまじのみこと)を祀(まつ)る。宇摩志麻遅命は饒速日命(にぎはやひのみこと)の子で物部氏の祖。神武(じんむ)天皇の詔(みことのり)を受けて、播磨(はりま)を経て石見(いわみ)に至り、その地を平定ののち守護にあたり、当地で薨(こう)じ、のち継体(けいたい)天皇のとき、子孫が社殿を造営したのが本社の創建と伝承する。941年（天慶4）従(じゅ)四位上、『延喜式(えんぎしき)』で小社、のち石見国一宮(いちのみや)とされ、中世には武将の保護を受け、近世江戸幕府より朱印領300石を受けた。明治の制で国幣小社。例祭10月9日。ほかに1月15日の小豆御贄(あずきみにえ)神事など特殊神事が多い。

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小破れ。ページ小黄ばみ。もちろん読む分には問題ありません。37001

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。