昭和51年　336P

はしがき

明治年代の警察を動かした首驚者は、中央では内務省の警保局長、地方では東京の警視総監と他の府県の警察部長であった。従ってこの年代の警察が如何に運営せられたかを知るためには、これらの首脳者の制度と、これに当った 人物を知ることが必薬であるのはいうまでもない。地著「明治警察史研究」第四巻で警保局長の制度と人物をやや詳 語に説明したのはそのためであった。本書の第一に収めた「明治年代の警察部長」はこれに続くもので、東京以外の府県の警察部長についての研究である。

ところで警保局長とちがい、府県の警察部長は人数が非常に多いので、その人物についての研究は困難なので、制度の変遷を主とし、人物については代表的と思われる数氏をあげるに止めた。しかしその時代の警察部長は、地方官のうちでは世間的に注目の的となりやすい地位であった結果、全く事実でない伝説が真しやかに伝えられているものがあるので、それを正すために説明したものもある。

第二の「明治十七年の賭博犯処分規則」は、警察関係の法律としては、明治年代を通じて他に例を見ない特色のあるものだが、従来これについて纏まった研究が見られないので、立法までの経過や実施につき、やや詳細な研究を試みたものである。

第三の「川路大警視の『泰西見聞誌』」 は、これが作られてから百年を越した今日まで、全然世間に知られずに来れたものであり、私が全く偶然の機会に群馬県館林市立図書館で発見したものであり、川路が困難な条件の裡で勉強した記録として驚くの外はないものである。私にとっては長い警察史の研究を通じて、最大の収穫ともいうべきものであり、これをこの巻の収めて後世に伝えることが出来るのを栄光としているのである。

外箱小傷、小汚れ。もちろん読む分には問題ありません。25241

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。