即中茶記・1巻-3巻の3冊でまとめてみました。　昭和45年

第十三章 略點前

略點前は所謂お盆点のことであります。早くからお盆點がきめられて居る流儀もありますが、私共では、正式にお茶を客にさしあげることを重じ、出來るだけ茶道の正統を伝へたいと考へて居りますから、お盆転は従来きめて居りませんでした。

しかし、戦争中に茶席を焼失したり、一方先生方は別としても、一般にめいめい正式に爐を切って釜をかける場合が少なくなりますので、鐵瓶にお湯をたぎらせて一服飲むのにも風情があるようにという考えから、先年お盆点の点前を定め、略点前と名付けました。正式の茶室でなしに、自分の居間でも或は応接間でも、爐の切つてない場所でも、或は風爐の時分にも、正式の風爐を用意しないでも、火鉢や瓶掛に鐵瓶をかけ、そこへお盆に茶碗や茶器をのせて持って出てお茶をたてます。

こうしますと、日常忙しい生活の間にも、臨時の場合でも、客においしくお茶をもてなすこと出来ます。奥からたて出しのお茶を客前に持って出るよりも、どれほど風情がありませう。

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