昭和53年　247P。部数は少なそうです資料用にもいかがでしょうか。

はじめに
この本を手にされた方の中には、おもしろい武芸談などを読もうと期待された方があるかも知れない。 この本には、ほとんど武芸談は書かれていない。 その土地における剣術の流派 (天然理心流)の発展 について詳しく述べたものである。
私は、江戸中期以降に関東で武術(剣術)が流行したのは、それを迎え入れる地盤として、農村の指 導者層(豪農層)の文化的活動との関連を見逃してはならないと思う。多摩郡において地方文化ともい える、国学、漢学、茶道、花道、などの系譜があって、これと同化し発展したのが剣術であると思う。 また剣術を教える側としては、地方の教養人に教えているため、それらの人々の感化を多く受け、当然 深い教養も秘めていたと思われる。

しかし、天然理心流師範の多くは、その土地に生まれ、その土地で没したため、広く一般的に名が知 られることはなかった。深く調査するにしたがい、これらの名も知れず天然理心流を伝えた人々の中に、 多くの立派な人物がいたことが確認された。天然理心流師範のご子孫のご協力により、各師範の一生の 片鱗でも記すことができたことを、深く感謝している。
昭和五十三年十一月十日
著者識

表紙小傷程度で特に目立った傷や汚れはありません。