1992年 295ページ


クラブ・デ・トラントは、1980年に、日本のフランス料理をこれ
まで以上に発展させようという情熱をもつ街場のレストランのシェ
を中心に結成されました。いろいろな活動を続ける中で、1986年 11月より今日まで、服部栄養専門学校にて、「現代フランス料理フォ ーラム」と題した講習会を、年に2~3回の割合で催しております。 1回の講習会は3日間、午前と午後に分かれ、計6人の会員が講師 として、フランス料理の基礎技術はもとより、各店のスペシャリテ にいたるまで、 毎回テーマを決めて担当しております。
この度、このフォーラムに協力、 後援していただいている柴田書 店より、 過去4年間の内容を、 我々の集大成として2冊の本にまと めることになりました。 従来の料理の本は、料理を作り、写真を撮 り、レシピを添え、そして出版社がまとめるのですが、この本は、 フォーラムという形で大勢の方々の前で実際に料理を作り、講師と して料理を担当している会員と、 それ以外の会員も加わり、会場の 皆さんと質疑応答を交わしながら進めていった、まさに臨場感のあ るものです。
私どもは、長い間調理に携わっておりますが、 まず、 料理を作る ということは、素材の高い、 安いにかかわらず、 その持ち味をどの ように生かしていくかということが第一だと考えています。 高価な 素材を使った高い料理だけが美味となるわけではありません。 値段 の安いものでも、鮮度のよいものを見分けてその持ち味を生かす。 料理人にとって大切なことは、よい素材を見分ける眼力とその持ち 味を生かすテクニックだと思います。 このフォーラムでは、そこの 部分に詳しく触れています。 たとえば、スズキという魚を取り上げ てみても、湾内で捕れたものと外海の流れの速いところで、それも 網ではなく、一本釣りで捕ったものとでは、味が全く別のもののよ うに違うのです。 野鴨にしても、 自然の恵みの豊かな所で捕れたも のと、都会に近い所で捕れたものとでは、味も香りも違ってきます。 そしてその鴨でも、焼き上げてすぐに切り分けてしまいますと、味 の大半を占めるジュが流れ出てしまい、肉の味は半減してしまいま す。 少し休ませて、肉の内部に踊るジュの運動を静めてから切って いけば、おいしくいただけます。
このようにして、この本の随所に、おいしい料理を作るための秘 訣が紹介されておりますので、きっと皆様のお役に立つことと思い ます。この本から、いろいろなテクニックを読み取られ、 活用して いただき、それに皆様の個性が加われば、これ以上申し上げる事は

表紙小傷、小黄ばみ。もちろん読む分には問題ありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。