2018年 63ページ

寄木細工の収集を始めておよそ半世紀、 歴史や製作技法を知るほどに興味が増し、 世界中の産地を巡る旅をしてきた。 作品やそれを作る人、使う人との出会いは枚挙 にいとまがない。 きっかけは子どもの頃に手にした箱根土産の寄木細工小箱が、 骨 董市で売られているのを見掛けたことである。 百点千点で収集が尽きると思っていた が、10万点を数えるまでになった。 スマートフォンで世界一の寄木細工コレクション を検索すると、 私のコレクションが検索最上位に上がるらしい。 スマートフォンを持 たない私にとっては望外の驚きであるが、 光栄なことである。
寄木細工の歴史をひもとくど、その源流は西アジアの国、シリアやヨルダンにたど りつく。 シリアでは今から4千年も前から作っていたという。首都ダマスカスには専門 店が並び、 民家の家具はもちろんイスラム教会やキリスト教会の調度品もそのほとん どが寄木細工である。
日本には唐の都よりもたらされた寄木細工が奈良の正倉院に遺存する。 その後日 本では蒔絵や螺鈿を施した漆器が主流で、 寄木は箏等に形をとどめ多くは作られ なかった。 江戸時代に駿河国府中で市松と乱寄木文様を施した家具等が作られ ると評判を呼ぶ。 江戸時代後期には駿河より箱根に寄木細工作りが伝わった。 以 来京都や江戸(東京)、 また箏を飾る寄木が広島県福山と各地で作られている。
この度の展示は寄木細工の歴史を紐解くとともに美を見いだすことに主眼を据えた。 いずれも驚嘆に値するものと確信する。 お楽しみいただきたい。
日本輸出工芸研究会

表紙小傷程度で特に目立った傷や汚れはありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。