昭和46年　264P

あとがき
日本刀の美しさは、地鉄・刃文など研ぎすまされた刀身にあることは申す までもありません。しかし日本刀製作の最後の仕上げであるなかご仕立ては 刀匠の特徴がもっとも発揮されるところで、なかごの切銘・ヤスリ目は、人 間に例えれば指紋のようなものです。したがって真偽鑑定のうえにも重要な ボイントとなっています。

ところが、こんにちの日本刀鑑賞は刀身を十とすればなかごは二・三程度 に扱われております。数多い刀剣書の中で、なかごのみに焦点を合せた本は なく、私は常々残念に思っていました。さいわい先輩諸先生の御指導をうけ てこのような刀剣の本を出版することができ、大いに喜んでいます。

この一冊がなかごの重要さ、そして美しさについて愛刀家のみなさまに再 認識していただければ幸いと思います。

本書の出版にあたり、刀苑社村上孝介先生と刀剣研究家として定評ある福永酔剣先生に「刀銘」について貴重な御意見をお寄せいただき感激にたえません。心からお礼申上げます。また宮口一貫斎恒寿先生にも豊富な体験にも とづいた興味ぶかいお話を伺い紙上を飾らせていただきました。

本書は多くの先輩諸先生のお力を得て出来上ったものですが、なかでも、私が発行する刀剣目録「麗」の愛読者のみなさまから、貴重な押型・アンケ ートをお送りいただきました。これは私が常日頃から考えている「できるだ け多くの愛刀家とともに作る本」という主旨に添うものであり、喜びにたえません。

御多忙中で、押型をとってお寄せくださいました「麗」愛読者のみなさま に厚くお礼申上げます。
昭和四十六年五月
柴田光男

表紙小傷、小汚れ。もちろん読む分には問題ありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。