2007年　71P

はじめに

当館のシリーズ展「美術の遊びとこころ」は、昨年の夏から始まりましたが、初回は「美術のなかの『写』―技とかたちの継承」と題して、日本の伝統文化における「写す」ことの意味と重要性を紹介し、多くの方々にご好評をいただきました。今年はシリーズの第二回として「旅」をテーマに取り上げました。

古来「旅」といえば、政治的・経済的な目的による旅から、宗教的な旅、文学的な旅、放浪の旅など、様々な旅がありますが、この展覧会では美術作品を中心に構成し、先人が旅のなかで培ってきた日本の文化と、旅に寄せてきた様々な思いを、絵画・書跡・工品などの名品・優品で紹介し、また、来館者自らも作品中に美的感性の旅を追体験していただきます。

展示構成は、展示室ごとに小テーマを設け、展示室1・2では身近でアウトドア的な「小さな旅」に関わる工芸品、展示室3では旅にゆかりの茶道具取り合わせ、展示室4では「霊場と名所への旅」として国宝「一遍聖絵」をはじめとする名品・優品、展示室5では「イメージへの旅」として文芸的な旅を西行や芭蕉に焦点を合わせ、展示室6では鳥の目から見たような日本の名所鳥瞰図、展示室7では「大日本五道中図屏風」で江戸から長崎までの街道と航路をたどり、さらに南蛮屏風・航海図など海外への旅へとつなげ、旅の多様性と浪漫を楽しんでいただきます。

この図録は、この展覧会の出品作品のなかから、国宝・重要文化財をはじめ館外よりお借りした貴重な作品を中心に、館蔵の名品も加えて編集した展覧会図録です。各展示室の小テーマに沿って構成し概説と作品解説を付しました。国宝「一遍聖絵」をはじめ貴重な作品のご出品を賜りましたご所蔵者各位には心から厚く御礼を申し上げます。

二〇〇七年七月一
三井記念美術館 館長 清水眞澄


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