躍動する中世
全集 日本の歴史 第5巻
五味 文彦
定価: ￥ 2400+税

#五味文彦#本 #歴史／日本史

平安時代といえば、藤原道長を頂点とする藤原摂関家が実権を握り、『枕草子』や『源氏物語』などの女流文学が開花した華やかな時代でした。かな文字の普及とともに貴族の嗜みに和歌が必須のものとして定着し、朝廷の勅命で編纂された『古今和歌集』から『新古今和歌集』に至る、歌の時代でもあります。
『新古今和歌集』は、後鳥羽上皇の勅命により藤原定家らが編纂、この歌集には第三代鎌倉幕府将軍の源実朝の作品も収録されています。実朝は武士の棟梁でしたが、メンタルは貴族の繊細な美意識も兼ね備えていて、当代一流の歌人後鳥羽上皇や藤原定家との交流も伝えられています。
しかし、実朝が甥の公暁に暗殺された後、後鳥羽上皇は再び朝廷政権奪取のため立ちあがりました。「承久の乱」勃発！しかし、幕府軍にあっけなく大敗、以後貴族階級は急速に没落し、武家政権が台頭、――こうして雅やかな平安王朝文化は、戦乱により地方へ拡散しながら、武士のエネルギーに乗って、鎌倉時代から南北朝時代を経て室町時代へと流れ込みます。
幕府を京都の室町に移すと、京の都は大勢の武士であふれかえります。一気に貴族文化と武家文化の混淆が加速され、この時期独自の型破りキャラも登場、その一つが「婆娑羅(バサラ)」です。


”婆娑羅の王権を体現した後醍醐天皇に対して、佐々木道誉は婆娑羅の風俗を体現した大名であった。当初は鎌倉幕府の得宗の北条高時に仕えていたが、幕府の滅亡に動いた後は、建武政権で雑訴決断所の奉行をつとめ、さらに足利尊氏に従って室町幕府が成立すると、近江守護や政所執事をはじめ室町幕府の要職を務めるなど、変転する政治に巧みに乗っている。
道誉は『佐々木系図』に「香会、茶道、人に長ず」と記された風流の文化人でもあり、世阿弥の『申楽談義』に猿楽能に影響を与えた人物と記されている。茶や能、連歌・花・香といったこの時代のあらゆる領域の芸能の展開に深くかかわったが、その婆娑羅ぶりについて、『太平記』はいくつものエピソードを載せている。”
〈第6章「政治と文化のかかわり」
　　　　　　　　　　　　　　より〉

権威や既成の価値観なんかまったく無視、そのいでたち、行状はド派手で破天荒！雇い主の足利尊氏にも噛みつくほどのハードパンク。

美品