洋行の時代 岩倉使節団から横光利一まで

大久保喬樹

中公新書　2008



徳川幕府の方針が鎖国から開国に変わり、修好通商条約の批准書交換の使節団が太平洋を渡って以来、命がけの洋行が行なわれるようになる。初めは、国づくりの重点課題を学ぶための公費による渡洋ばかりだったが、徐々に目的が多様化し、私費による遊学、あるいは旅行や放浪も増えていった。約一〇〇年の間に、日本から外国への学びの旅が、どのように変化していったのかを、文化人の事例を中心に辿るものである。



目次

序章　洋行前夜

　天正遣欧使節から江戸幕末開国まで

　福沢諭吉の欧米見聞

　森有礼の遍歴

第１章　文明開花の時代

　海に火輪を―岩倉使節団の出発

　欧米縦断

　記録官久米邦武の見識

　帰途・帰国後の日本

　津田梅子の留学

　プリンス西園寺の青春

　庶民と洋行―『西洋道中膝栗毛』

第２章　『舞姫』と『倫敦塔』―鴎外、漱石の留学体験

　異国の恋と破局―『舞姫』

　20年後の豊太郎とエリス―『普請中』

　霧の中の世界―『倫敦塔』

第３章　旅する芸人たち

　曲芸師たち

　川上音二郎と貞奴

　花子とロダン

第４章　世紀末デカダンスと遊学する青年たち

　永井荷風―放蕩息子の青春

　有島武郎―白樺派的理想主義の逆説

　高村光太郎―ボヘミアンのパリ

第５章　さまざまな外遊

　与謝野晶子―雛罌粟と女性解放

　島崎藤村―大戦を越えて

　大杉栄―無政府主義者のフランス潜入譚

　円本作家たちの世界漫遊

　めりけんじゃっぷの欧州漫遊

　どん底―金子光晴とユーラシア放浪

　バロン薩摩とパリ栄華の夢

第６章　洋行の終わり―横光利一『旅愁』

　新感覚派文学と現代社会

　エジプトにて

　野蛮なキリスト

　科学的合理主義か精神的非合理主義か

　チロルの山の夜の祈り

　日本への旅立ち

　東洋の融和、宗教と科学の接点

　洋行から日本回帰へ

終章　洋行から海外生活へ

　最後の洋行者―森有礼

　アメリカ化、グローバル化の時代―江藤淳

　洋行という文化



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