フランスの著名な家具デザイナーであり木工職人でもあったピエール・シャポのスツール S31です。こちらは彼の孫にあたるゾラン・シャポが引き継ぎ運営しているCHAPO CREATIONSによるもの。この工房はピエール・シャポの意思を継ぎ、当時と同じプロヴァンス地方アヴィニョン近郊のゴルドの地で製作を続けています。2019年オーダー品。

素材 : エルム材
直径 : 33 cm
高さ : 45 cm
重さ : 3 kg
製作者 : Workshop of Chapo Creations
フランス製

所々テーブルか何かに当たった小さな跡はありますが欠けたり割れたりしている箇所はありません。殆ど本置きと化していましたので状態は美品と言って差し支えないかと。

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なぜ3本足なのか？

モダニズムのデザインを考える時にはヨーロッパにおける宗教の変遷を押さえておくと理解の助けになります。暗黒時代、ルネサンス、宗教改革、啓蒙時代を経て世俗化する近代。これは簡単に言えば世界の中心が神から人へと移ってゆく流れであり、迷信的な宗教から現象を要素や法則に分解し理解しようとする科学への改宗とも言えます。

ではモダニズムとは何だったのでしょうか。キリスト教はアダムとイブが追放される以前の楽園を、ルネサンス期の古典主義は古代ギリシャローマを、というようにかつて彼らの理想郷は過去にあるものでした。しかし産業革命・市民革命を経て人の力に対する自信を深めた近代人は歴史の最先端である現在そして未来にこそ価値があると考えはじめます。この思想が生み出したのがモダニズムでした。

ここで最初の問いに戻ります、このスツールはなぜ3本足なのか。それは"実用としての機能性"と"生産のための合理性"を突き詰め削ぎ落としていくと、物が自立するために最低限必要な地面との接地点は3だからという答えに辿り着くからです。科学的合理性に基づいたモダニズムらしいデザインと言えるでしょう。

これはあくまで3本足に着目した考えで、自身も木工職人であり伝統的な手工芸に対する強い敬意を持つピエールシャポーを純粋なモダニストとカテゴライズするのは不適当かもしれません。しかしヨーロッパの宗教・思想の大きな流れからこのスツールを眺めるとより理解が深まるのではないかと思います。