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【松本清張賞】推定脅威

自衛隊戦闘機「TF－1」がスクランブル飛行中に墜落するという異常事態を受け、防衛省は直ちに検証に乗り出します。依頼を受けたのは戦闘機製造元・四星工業の新人技術管理官・沢本由佳と、彼女の上司である空力制御班主任・永田昌彦の二人。シミュレーションの結果、原因はパイロットの単純な誤操作によるものだと判断されますが、永田も沢本も完全に納得はできず、元同僚の倉崎に相談を持ちかけます。とかくしているうちに同じ「TF－1」がスクランブル飛行中にエンジントラブルで墜落するという第２の事故が起こります。パイロットは脱出して救助されましたが、相次ぐ不祥事に単なる人為的なミスが原因ではないと感じ、真相を究明する疑惑を深める永田、沢本、倉崎です。スクランブル発進した自衛隊機は、なぜ不可解な事故を起こしたのか？３人は一連の事故が新鋭機「TF－1」の構造上の弱点を微妙についたものであることに気が付きます。「TF－1」にはさらに致命的な欠陥があり、次にはここをついてくると予想する３人は敵に対するわなを仕掛けます。かくして予想通り新たなスクランブル発進が行われ…



リヴィジョンA

主人公は女だてらに航空技術者・沢本由佳。彼女は四星工業で戦闘機開発に携わる仕事がしたいと願っていました。恋人であるデザイナーの意見も取り入れて四つ星工業の主力機TF-1の改修開発（リヴィジョン）を提案します。とんとん拍子に社のプロジェクトとして計画は膣案されますが、予算獲得、運用、そして防衛省（官）との折衝、自衛隊パイロットとの交流、大手企業からの横やり、さらには社内の不正発覚・・・と解決すべき問題は多く、まるで池井戸の企業小説みたいになっています。

航空業界や重工業について専門知識が多いのですが流石は技術者が書く小説なので、平易に解り易く説明されますので苦になりませんし、その圧倒的なリアリティに感心します。自衛隊の戦闘機パイロットの作品は多々あるけど、設計者や整備士の視点は新鮮ででした。

登場人物は「推定脅威」でおなじみのメンバーがかぶっていますが、前作を読まなくても十分楽しめます。