「軍艦武藏 上下巻」
手塚 正己
定価: ￥ 2300 ¥2400

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戦記物としてトップ級の面白さ。
吉村昭の名著戦艦武蔵は建造が主でしたが、これは生存乗員73人への取材と、防衛省戦史局と米海軍省資料からなっています。
艦内生活や各配置での戦闘状況、海軍の歴史戦史と機構、陸軍と時代背景、将兵の気質気風に口調や隠語まで記されていました。それに複数の詳細艤装図に航跡図に詳細戦闘地図が添付されていたので、それを見ながら米軍の誰がどの方角から何で攻撃し、そのうちの何がどこにどう当たって、艦のどこにどんな損傷を与え、誰がどう負傷したかまでリアルにわかります。この調子で同僚艦の戦歴や戦闘状況、武蔵沈没後の救助艦の働きや乗員の去就も記されます。
そして彼らの終戦までの戦歴と戦後から現在までの暮らし方まで書かれていました。史実を伝えるのが主眼だったらしく、戦術戦略へのコメントはありません。ただ米機動部隊の編成と攻撃状況に対し、艦隊各艦長がどう行動したかは読み取れます。
雷撃砲撃爆撃はそれぞれどんな影響があるのか、それによる故障相次ぐなか、閉ざされた室温65℃の機関室の将兵はどうなったか。沈没により30cm厚の重油が漂う海で、どう救助活動がされたか等、体験者談が綴られていますが、就航から沈没まで関わった2人を軸に書かれています。帝国海軍俯瞰には最適の名著でした。