本書籍は、1981年11月30日
自動車工学全書編集委員会
㈱山海堂から発行されたもので、全２６巻中の第４巻です。

　この全集は日本の自動車業界が総力を挙げて著作、編集した記念すべきもので、この第４巻　ガソリンエンジンも完璧に纏められた優れた書籍です。
　一見薄目の書籍ですが内容は約４２０ベージもあり、自動車用ガソリンエンジンの技術の全てに亘って、計算式•理論と実際のデータ等で記述され、戦後の自動車用ガソリンエンジン技術の集大成と言って良い書籍です。
　写真にも載せてあります通り、各章の執筆者は殆がトヨタ自動車㈱の現役技術者•研究者であり、その内容の高度さと信頼性は高いと思います。
　引用の論文や参考文献等がしっかりと記載されていて、詳しい追求や確認も可能です。

　蛇足ですが、今世界の自動車技術は、「脱炭素」の為にＥＶ化が必須のような情勢にあります。しかし、現在のＥＶ化は結局は火力発電等に大きく依存し、太陽光発電の実態も、定格電力ベースで有効稼働時間が日照条件の一番良い関東地方でさえ僅か１／７以下しかないという大変動、不安定電力であります。大規模化するほど、更に大規模な補完の為の発•充電システムが必要になるという有り様です。これが更に火力発電への依存度を高めています。

　ＥＶ化には、ハイコスト化と膨大な資源開発やリサイクル等の環境•充電の設備投資等、実現不可能な課題や矛盾がはっきり出て来ました。
　今年２０２３年になって、欧米の自動車メーカーの多くは、そのような性急で無理なＥＶ化への転換をギブアップしました。
　その悲鳴に応えて、水素と炭酸ガスからなる合成燃料e-fuelと現行エンジンによる脱炭素化も選択肢になりました。
　元々ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、水素エンジン車、燃料電池車等はそのようなＥＶ化の困難さと矛盾を予見し、解消できる手堅い方策•技術であった訳です。

　エンジン技術関連の書物の多くは教科書的な、ある領域や後進の指導のために書かれていますが、本書は一流メーカー自身の長い苦闘と理論化の積上げ結果の記録であり、断片的•仮説的なものでもなく、完全に実用化•実証された技術の説明と言うことが出来ます。

　この本、自動車全書第４巻「ガソリンエンジン」は、最後迄手元に残すべき書籍の１冊かもしれませんが、今回、必要とされる方にお譲りします。