『発掘から推理する』

金関丈夫／著　岩波現代文庫　2006年3月第1刷発行

定価：￥1000＋税



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〈内容紹介〉

矢尻が刺さった跡のある女性の頭骨。彼女の死はいったい何を意味するのか。抜歯の習俗や勾玉等の装飾品にみられる精神世界とは何か。占い・入れ墨の風習と人の流れはどうか――。博覧強記の人類学者・金関丈夫が、発掘の成果を、世界の民族例や日本・中国等の古文献などを交えて綴った軽妙なエッセイ。古代世界への想像力を刺激する1冊。



本書は『朝日新聞』西部版に連載された「発掘から推理する」を表題作とする考古エッセイ集で、人類学者・解剖学者でありながら、民俗学・考古学にも造詣が深かった著者の持ち味が存分に活きた著書である。



平戸市根獅子（ねしこ）遺跡の矢尻の刺さった女性頭骨、山口県土井ケ浜遺跡のハリネズミのように矢が刺さった男性人骨、鹿児島県成川遺跡のいかにも薩摩隼人といった風情の人骨、そして、鹿児島県広田遺跡の貝飾りや福岡県桜馬場遺跡の鉤（かぎ）のついた銅釧（どうくしろ）の意味、島根県古浦遺跡のト骨の方法、福岡県竹原古墳壁画に描かれた馬の解釈など、さまざまな事例を古文献や各地の民族例と突き合わせ、大胆に推理していく。



著者の人となりを、金関恕氏は解説でこう記す。

「この解説を承った私は著者の次男であり、遠い昔に台北市郊外の遺跡の発掘調査に駆り出されて手伝って以来、考古学の面白さにとりつかれ、とうとうその道に入り込んでしまった。以後、多くの弥生遺跡の調査を共にした。今の私より若かったころの父が書き残したこれらの文章を読むと、学問の広さの点でも、発想のユニークな点でも、私が到底及ばないことは確かである。一世代前の学者が皆偉かったのか、あるいはむしろ私が特別劣等生なのだろう。……」



解説者自身の謙遜はあろうが、現在・過去にこだわらず、人間に対する並々ならぬ愛情と関心が著者の学域を広げ、親しみあるエッセイを生み出したものと言えるのではないか。ぜひ金関丈夫ワールドをお楽しみあれ。



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