家康は海外交易に熱心だった。中国、東南アジアに赴く朱印船貿易にも力を入れ、ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリスとの貿易も奨励した。特に朝鮮出兵でずたずたになった明・朝鮮との関係修復に力を注いだが、明との強い結びつきを持つ島津氏に頼ることが必要だった。秀吉の死後、慶長の役から帰国した島津義弘が連れてきた明の軍将は義弘の引合せで家康に謁見し、家康は日明勘合貿易の復活を希望する書状を託し帰国させた。明国はこの書状を受け入れて慶長６年（１６０１年）福建から２隻の船が派遣されたが硫黄島沖で堺の商人に襲撃され船は沈められてしまい、この事件で勘合貿易の賦活は頓挫した。こうした事態の修復のためには島津による協力が不可欠、関ヶ原合戦後の島津氏処分が他の西軍大名に比べて遥かに軽微、というより全くお咎めがなかった理由はここにあった。



本書によれば、家康と義久は秀吉への反発と朝鮮出兵をやめさせたいという思惑で一致していたが、秀吉の軍事力に屈した島津氏は恭順の姿勢を示して、秀吉は出兵を強行した。その後ろ盾として明の影とその力を利用したい島津氏があった。家康は国家間の貿易をイメージしていたが、島津氏としては従来から薩摩と明のあいだで個別の商人たちが東シナ海を行き来して国家には縛られない貿易をしていた状況を継続したかった。両者の思惑は元から微妙にすれ違っていたが、家康の死により江戸幕府の外交政策は一変した。キリスト教禁令を重視した秀忠は宣教師の潜入を防ぐため欧州船の来航地を平戸と長崎に限定しようとしたが、九州大名はこれに反発し、これを撤回。家光の時代になり１６３４年には薩摩藩に対し唐船の領内寄港を禁止、翌年日本人の異国出国、異国よりの帰国を禁じ、ポルトガル船の来航も禁止され鎖国体制となった。

定価: ￥ 780



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