〈狐〉が選んだ入門書
山村 修
定価: ￥ 720+税

#山村修 #本 #文学／一般

山村修
1950年生れ。慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業。青山学院大学図書館司書の傍ら、〈狐〉のペンネームで1981年2月から2003年7月まで1188本の書評を日刊ゲンダイに発表。主な著書に『狐の書評』（本の雑誌社）、『野蛮な図書目録』『狐の読書快然』（洋泉社）、『水曜日は狐の書評』『もっと、狐の書評』『増補　遅読のすすめ』（ちくま文庫）、『禁煙の愉しみ』（洋泉社／朝日文庫）、『気晴らしの発見』（大和書房）などがある。2006年逝去。


著者のいう「入門書」とは、原典を理解するための補助をめざして書かれた本のことではない。著者はそれを「手引書」と呼んで、区別する。ある分野やことがらを対象に、一般の読者向けに、平明な文章で書かれているというのは無論のことだが、「入門書」はその書物自体が一個の作品となっていなければならない。それは思いがけない発見にみち、読書の歓びを与えてくれるだろう。各分野の厳選された入門書を紹介する画期的な読書案内。

その中から、著者が選んだ１冊を紹介します。

” この『〈狐〉が選んだ入門書』にとりあげた25冊のうち、これはもう異色中の異色といってよい１冊です。なにしろ著者は、近代日本の詩史において萩原朔太郎がひとつの山であるとすれば、もうひとつの山をきずいており、この二つの山をたどると近代詩の流れがあらまし描ける――と評されるほどの詩人です。思想も特異なら表現も特異。………。
この１冊を読めば近代日本の姿が「全部分かる」というのは、誇張のようにみえて、じつは誇張でもなんでもない。右にあげた詩句にもある「そのいきの臭えこと」という強烈にしてリアルな批評意識で明治・大正・昭和の日本人を腑分けし、その「精神」の臓物を引き出して白日のもとにさらしてみせる本です。”
〈金子光晴『絶望の精神史』より〉

その他、特に第5章「美術のインパルス」が充実していました。
前田英樹『絵画の20世紀』―20世紀絵画に「感覚の実現」を読む―、
から１節
” 純粋視覚のリアリズムという狂気。物は光だという錯乱。セザンヌはそうしたモネを理解し、尊敬していました。前田英樹も引いていますが、「モネは眼に過ぎない、しかし何という眼だろう！」とはセザンヌの有名な言葉です。”


美品