『ヤンキー文化論序説』
五十嵐太郎 編著
河出書房新社2009年刊
定価1600円

なぜヤンキーをめぐる議論なのか。これは誰もが知っているのに、あまり本格的に語られないテーマだ。一方、同じサブカルチャーの議論でも、オタク系の研究や批評は急速に増えている。いや、すでに飽和しているというべきか。マンガ、アニメ、フィギュア、萌え、秋葉原、ひきこもりなどをめぐる言説は確実に膨張した。理由のひとつは、ネットの空間とオタクの親和性が高いからだろう。そもそもオタクは批評家体質が強いために、すぐに言語化される。また大学に残り、研究職に進む人材は凝り性であり、オタク体質も多いと思われる。かつて良識派の大人から眉をひそめられた文化だったが、今や国の首相がオタクの聖地、秋葉原に出向いて演説したり、アニメやマンガのコンテンツの輸出が国策として奨励されている。おそらくオリエンタリズムとしても有効に威力を発する、海外にアピールするソフトパワーなのだ。
（本書「まえがき」より）