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剣客群像

直木賞を受賞した「妙音記」から「秘伝」までの初期短編８編を収録。剣に弓に手裏剣に柔術にとそれぞれ道は違えど達人となった武芸者たちの人生が描かれます。

「妙音記」

剣術無双な女剣士・佐々木留伊。年頃になり婿取りを勧められます。しかし弱い男には嫁がないと、女ながら辻斬りならぬ「辻投げ」で強い男を探しますが連戦連勝。何とか嫁がせたい周囲の声を受けて、主命も後押しし候補に挙がったのが小杉重右衛門。面相はひどいがその腕は藩中一の若侍です。そして瑠伊と重右衛門との一騎打ち、剣戟では瑠伊の勝ちであったが・・・・。ちなみ留伊は実在するとの事。　

「秘伝」　

後任者を指名せずして師匠が没すると弟子たちの間で免許皆伝の「秘伝」を争うことになりますが、本小説ではこの「秘伝」を著した巻物をめぐっての3人の弟子たちの争奪戦が描かれます。果たして苦労して手にした秘伝は全くの白紙。師匠が弟子たちに残したかったものとは…

他にかわうそ平内、柔術師弟記、弓の源八など部芸達者のかならずしも幸福ではない人生を切り取っています。



忍者群像

時代背景は戦国時代から江戸初期まで様々。アニメや漫画で出てきがちなスーパーマンはなく、あくまでも諜報活動・刺客としてかなりリアルな忍者活動を描きます。

「鬼火」

本能寺の変直後の「中国大返し」に関わった忍者の話。当の光秀の配下の坂巻伝蔵と松尾九十郎の2人は信長側のそして明智側の忍びで、この時の因縁は後々まで尾を引きます。

「首」十七年前に明智光秀を討ったのは岩根小五郎という忍び。彼はこれを武勲として生きていましたが、「明智は生きている」といううわさが流れます。もしや自分が討ったのは影武者？そうしたら仲間の笑いものになると焦る小五郎は・・・

「寝返り寅松」秀吉が天下取りのために関東の北条氏を迫ますが、あらかじめ忍びの小出寅松を北条方の山岸主膳之助の家来として潜入させています。しかし寅松は主君山岸主膳之助の魅力にはまり、とうとう娘までもらって寝返りをしてしまうのでした。

　他に闇の中の声、やぶれ弥五兵衛、戦陣眼鏡、槍の忠弥を併載。