ベートーヴェン

①ピアノ・ソナタ第28番イ長調作品101

②ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調作品106

《ハンマークラヴィーア》



ヴィルヘルム・バックハウス（ピアノ）

録音：1963年２月（①）、1952年４月（②）　ジュネーヴ

〈②のみモノラル録音〉



音楽評論家：宇野功芳氏

「第28番は、バックハウスが唯一無二の出来で、これ以上の演奏はちょっと考えられない。まるでベートーヴェン自身が弾いているようだ、といえばいちばん当たっていよう。」



29番だけはステレオ録音を残さなかったので、Deccaのステレオ全集には29番のみ、このモノラル録音が収められている。モノラルＬＰ時代の旧全集に収められたもので、清潔で力強い打鍵の響きと、構成感を重視したゴツゴツと無愛想な演奏ぶりが、いかにもバックハウスらしい。



バックハウスの真価が最高度に発揮される場がベートーヴェン。ここに示された堅固で揺るぎない構成力、重厚で重みのある響き、強靭な集中力の持続、彫りが深く格調の高い造形的美観などは、衰えをみせる前の彼ならではの持ち味であり、それは、このピアニストの本領を鮮やかに伝えている。バックハウスは正確な読みを通じて、作品の根源に迫っている。彼が読み取ったベートーヴェンの音楽からは、装飾的要素や遊びやゆとりの要素が一切無縁なものとして切り捨てられている。その表現は威厳のある風格を備えると同時に、優しさを感じさせ、特にこのベートーヴェンには隙のない技巧に加えて、独特の味わいがある。変にうまそうに弾いたり、媚びたり、小才を利かせたりするところがいっさいなく、ピアニズムを感じさせずに、作曲者の魂が深く重厚に、立体的に、交響的に迫ってくる。最も偉大で立派な音楽があり、本演奏に肉薄し得たのは最晩年のアラウのみであろう。



国内盤、帯無し、盤面傷無し　11

ライナー(解説書)経年による汚れ少しあり



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