ベートーヴェン

①ピアノ・ソナタ第17番ニ短調 op.31-2『テンペスト』

②ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 op.53『ワルトシュタイン』

③ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調 op.81a『告別』



ブルーノ＝レオナルド・ゲルバー（ピアノ）

録音：1992年①、1989年②、1988年③



レコード界における長い沈黙を破って登場したゲルバーのベートーヴェンは、大きな歓呼をもって迎えられていました。往年の巨匠を受け継ぐスケールの大きい造形美、その中で情熱、叙情、幻想といったベートーヴェンに求められるものが深く崇高に弾きこまれています。まさに巨匠の芸風といえるスケールの大きさ、凝縮された感情、叙情、ファンタジー、どこを切っても濃密で熱い血がほとばしる迫真のベートーヴェンです。



ゲルバーのベートーヴェンは素晴らしい。「悲愴」「月光」「熱情」の３大ソナタに続くネクスト３大ソナタです。ゲルバーによるベートーヴェンのピアノ・ソナタの演奏の特色は、何と言ってもその美しさ。単なる表面上の美しさにとどまらない。その美しさは、深い内容に裏打ちされている。加えて、演奏全体の造型は堅固であり、ドイツ風の重厚さが演奏全体に満ち満ちており、独墺系のこれまでの様々な偉大なピアニストの系譜に連なる、正にいい意味での伝統的な演奏様式に根差したもの。眼光紙背に徹しているとも言うべき厳格なスコア・リーディングに基づいた音符の読みの深さが光っており、いわゆる薄味な個所は皆無。いかなる音型にも、独特の豊かなニュアンス、奥深い情感が込められている。随所に研ぎ澄まされた技巧を垣間見せるが、いささかも技術偏重には陥っておらず、常に内容の豊かさ、彫の深さを失っていないのが見事であり、知情兼備の演奏であろう。総括すれば、いい意味での剛柔のバランスのとれた名演であり、ドイツ正統派の伝統的な演奏様式に、現代的なセンスをも兼ね合わせた、正に現代におけるベートーヴェンのピアノ・ソナタ演奏の理想像の具現化したもの。ゲルバーによるピアノタッチが鮮明に再現される録音も驚異的です。



国内盤【廃盤】帯無し、盤面傷無し　



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