〈解説文は全て独自で書いております。無断使用はご遠慮下さい。〉

★昭和44年（1969年）第4版発行。函付き。
★函＝背にスレ汚れ、表面に保管上のスレ、小口に
　　　小傷有。
★本体＝背ヤケ、三方に経年ヤケ、ややシミ有。
　　　　見返し、見開きに経年ヤケ有。
　　　　本文紙面やや黄変有。


★上記以外、本文内に目立つシミ汚れ等無く、製本は堅牢で、ご愛読に支障は御座いません。児童書で55年経過の品としては、函、本体共に保存状態がとても良く、美品と存じます。

　英国の田園の中で、動物達が活躍するグレイ•ラビットのシリーズや、サム•ピッグが有名ですが、こちらの妖精をテーマにしたものには、また違った心に沁みるものが有ります。

　鈴木氏の優しい訳文は、心がホッとする読み心地。内容、訳文、表紙画まで全て整った魅力的な本です。

　アンが山の牧場にキノコを取りに来て、採る度に、「有難う」と野原にお礼を言っていた所、何と、お話を聞くのが大好きな小人に巡り会います。

　森羅万象に対して、お礼の心を持つ少女アンだからこそ、小人は姿を現したのだと思います。アトリーは八百万の神を信じる、日本の精神に近い自然の見方をしていたようです。

　小人が住み着くと、家事を立派にこなしてくれると言う下りは、デ•ラ•メアの「九つの銅貨」と同じだ！と嬉しくなりました。（こちらも、凄く素敵なお話が盛り沢山。機会があれば是非お勧めです。）

　小人はある日ふいと山へ帰ってしまうのですが、そういう終わり方も余韻があって良いなあ、と思うのです。

　「子ヒツジ売りのネッド」も、大好きなお話です。父の作ったオモチャの子羊を売りに来る若者。単価が安いので、手を抜いて倍作ろうと息子は言いますが、丹精込めて作った羊だからこそ、病気の王子様に、メェと鳴く羊の声が聞こえたのですね！

　アトリーの文章は、自然の風景が目に浮かぶ情感こもるものです。窓から見える風景の詩的な美しさ、小道を歩くときの周りの様子のしめやかさ。

　車や通行人の目が気になって、窓を開けておくのも憚られる現代とは段違いです。読むだけで心の疲れが取れそうな場面。農場育ちのアトリーでなければ描けない静けさです。

　大変古い本です。状態は上記★書きと、画像よりご判断下さい。

　古い本にご理解のある方との、嬉しいご縁を心よりお待ち致しております。