マーラー 君に捧げるアダージョ
クラシックジャーナル 043
中川 右介 / パーシー・アドロン / 城所 孝吉
定価: ￥ 1200+税

#中川右介#パーシー・アドロン #城所孝吉 #本 #芸術／音楽・舞踊

ここに一冊の本がある。著者はアルマ・マーラー。そう、マーラー好きにとってはお馴染みの『グスタフ・マーラー回想と手紙』である。
‥略…。
『回想と手紙』の序文には「これは自分が生きている間は公表しないつもりで書いた」という一文があり、これによって偽りのない真実を後世に残すために書かれたものという印象を強いものにしているが、そうではなくて、『回想と手紙』は明らかに出版を前提にして1938年から39年の間に書かれたものである。……。
つまり、この書物はマーラーについての一次資料としてではなく、フィクションも非常に多く含まれる面白く興味深い大河小説のようなものとして読まれるべきではないかということが言いたいのである。
…以下略…
〈前島真理「マーラーとアルマ」
　　　　　　　　　　　　　　より〉



のちにマーラー夫人となるアルマ・シントラーという女性は、まれに見る自由奔放な女性でした。彼女はウィーン名門貴族の血をひく社交界の花形でもありました。マーラーと結婚する前からウィーンの著名な芸術家と生涯浮名を流し続けていました。
まず、18歳でクリムトと恋におちますが彼は家族持ちですから、やがてマーラーと結婚することになったのです。そして次も画家のオスカー・ココシュカと激しい恋におち、マーラーが亡くなったあとは、ココシュカとスイス、イタリアへ恋の逃避行を続けますが、ココシュカが第一次世界大戦に出征すると、この映画のキーパーソン、グロピウスと再婚してしまいます。彼はバウハウスの創始者として知られる建築家でした。しかし、彼も戦場に向かうと今度はユダヤ人の詩人、フランツ・ウェルフェルと恋をして、最後はニューヨークで生涯を閉じました。
まさに、ウィーンの著名な社交界の芸術家を虜にした『ファム・ファタル(宿命の女)』だったようです。
アルマは、ほかにもマーラーと同世代音楽家のツェムリンスキーとの噂もありました。また、マーラーの次世代の音楽家、新ウィーン楽派のアルバン・ベルクはアルマの愛娘の死を哀悼したヴァイオリン協奏曲を作曲献呈したことも知られています。


美品