はじめに
　日本が直面する少子高齢化の影響は著しく、2100年の国内総人口は5000万人を下回ることが予想されています。さらに、近年の社会情勢や自然環境の大幅な変化により、世界中で新しい問題が次々と発生しています。このように、急速かつ複雑に変化する現代社会の問題は、最先端のコンピュータ技術を駆使するだけでは解決することができません。問題解決に必要なデータを収集し分析することで、問題の本質を正しく見極め、適切な解決方法を実現しなければならないのです。
　これを実現していくためには、統計学や人工知能AIによって成り立つデータサイエンスを正しく理解し、使いこなしていく必要があります。現代はビッグデータの時代と呼ばれ、社会のさまざまな営みの中で多種大量のデータを入手可能です。そして、ビッグデータを客観的に分析することができれば、人間の勘や経験では気づけなかった新しい知見を得ることができるでしょう。データサイエンスの需要は今後さらに増えていくと言われています。
　しかし、これまでのデータサイエンスは、一部の理系大学生のための学問でした。高度な統計学、人工知能などに加え、ビッグデータを効率よく分析するためのプログラミングや、分析結果を正しく理解するための数学知能も必要になるためです。ですが、データサイエンスは単なるデータ分析が目的ではなく、分析結果を用いて社会問題を具体的に解決する社会実装こそが本質だからです。
　そこで本書は、文系、理系の垣根を越えて、さまざまなブックグラウンドを持つ学生に向けたデータサイエンスの入門書となるように構成しました。データの集め方や前処理の方法から始まり、データサイエンスに必要な統計学、アルゴリズム、人工知能などを図解で楽しく学べるようになっています。文理融合の観点から、数式の記述は最小限に迎え、イラストやたとえ話などをふんだんに取り入れることで、初学者でも無理なくデータサイエンスに興味を持ってもらえるように工夫しました。さらに、プログラミング言語Pythonによる演習を行いながら、実践的なデータサイエンスの技術を身に付けることができます。
　それぞれの学習項目は、内閣府、文部科学省、経済産業省が協力して制定した数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度リテラシーレベルに沿っており、これから時代の中核を担う人が身につけるに相応しい内容...