昭和62年　305P　部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。

訳者まえがき
本書のなかにも記されているように、人類は他の生物に勝る大脳機能を利用して自然のなかで習得し た生活の知恵を技術として発展させ、そして科学を生み出した。さらに科学と技術とは完全に融合し, いわゆるハイテクを作りあげ、いまや無機世界と有機世界とを問わず,また人類を含めてハイテクの嵐 が吹き荒れている。これは科学技術進歩=生活向上=善という人間社会の規範の結果であろう。

しかし、人間存在のその瞬間から人類は周辺環境(無機・有機を含めて)から生きるためにエネルギ ーと物質とを摂取・利用して生きている。それゆえ,旧石器時代の前から大小様々なインパクトを周辺 環境と生物群に与え続けてきた。その結果が現在の地球上に見られる生物圏の姿である。我々のもつ科 学の目と手は何十億光年の彼方から原子の内部へまでもとどき,それらの生々流転の姿さえもかなり正 確に予測できるようになった。また地球誕生後10億年位から現在までの地球と生物圏の歴史をも,壮大 な生物の集団絶滅を含めてひもどきうるようになった。

しかしながら,このような優れた科学技術の駆使は一方ではかけがえのない地球上の生物圏の破壊一 生態的破局を招来させる危険性をはらんでいる。その顕われが不気味に増加し続ける大気中の二酸化炭 素濃度であるし、不用意な核の事故や全面的な核戦争の脅威である。これらは科学技術のハイテク化や 社会の電子情報化を背景として,実体感を稀薄化させながらあらゆる面で我々をソフトに包みこもうと しているように思われる。

著者M.I. Budyko は気象・気候学者として約45年前から研究生活に入り, "地表面の熱収支”(19 56)においてその地位を確固不動のものにした。その後も精力的に研究を展開し,簡易気候理論による 地球の気候状態の予測などで大きく世界に貢献した。また,気象・気候の分野から生態学の分野へも関 心を広げ、時間軸をさかのぼって古生物学的現象と気候変化との関係についても研究を次々と発表して いる。これらの成果は"気候と生命”(1971), "気候の変化”(1974), "地球生態学”(1977), "気候-その過去と未来”(1980)にとりまとめられている。

本書をBudyko に書かせた大きなモーティブフォースは人類をふくむ全生物を育てた地球のかけがえ のなさを広く訴えることでなかったかと思う。我々をとり囲む科学技術がすべてハイテク化の一途をた どる現在,技術進歩の自然生態的インパクトは肥大強化される一方である。しかし,科学技術進歩=生 活向上=善の規範にどっぷりと浸っている現代人は,それのもつ地球的重味を忘れるというより避けて 通ろうとしている気配さえうかがわれる。このような時,本書は正に警世の書といえよう。それゆえ, 本書は現在までの地理,気候,または生物の書物とかなり違った骨組と内容を持っているように思われる。

科学技術の発展による地球上の生物圏の危機を説明する一方, Budyko は科学技術の一層の発展によ って地球上の全プロセスを完全にコントロール下においた人間圏の創造の可能性を指摘している。この 両者をどのようにすれば矛盾なく整合的に経過的に発展させられるかについては触れていない。しかし, 著者の生まれ育ったゴメスの町はチェルノブイリから約30 kmで、今回の事故によって大きな危機に見舞 われたと予想されるが,現時点で本書があまれるならば若干違った見解が述べられたかも知れない。

お探しの方、お好きな 方いかがでしょうか。

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小汚れ。背表紙しみ。ページ黄ばみ。ご理解の上、ご購入ください。。3951