ドンホー版画 - ネズミの嫁入り(Đám cưới chuột)

この作品は、絵の上段に見られる行列と、下段に見られる行列とで、趣が異なっている。下段側は「結婚」や「迎婚」という文字が描かれており、ネズミが嫁入りする様子を描いている。一方の上段では、ネズミだけでなく猫の姿があり「送礼」という文字が見られる。そしてこちらの行列のネズミの手には、猫の大好物である鳥と魚が握られている。これは、全体として、結婚式を華やかに迎えウキウキしつつも、自分たちがもっとも恐れている猫にきちんと結婚の報告をし、贈り物をすることで、結婚後の生活の安定と安心を手に入れようとしている様子である。下段のネズミたちの顔がいろんな方向を向いているのも猫を恐れてのことだ。当時の封建社会の農民が、権力者にへつらう様子や、賄賂社会を風刺していると言われている。
また、ドンホー版画には遠近法という描き方は存在しないため、この画のように2 段に分けて場面が描かれたり、奥にあるものは紙の上に、手前にあるものは下に描くという方法がとられた。

横: 48 cm、縦: 34 cm