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鳶がクルリと

超優良企業でバリバリのキャリアウーマンとして働く貴奈子（キナコ）ですが、上司の「ちっちゃさ」に嫌気がさして辞表を叩きつけます。彼女の再就職先は叔父が社長をしている鳶の会社・日本晴れ。お嬢様育ちのキナコにとって、職人たちの生活はみること聞くこと驚きの連続です。

　粋なご隠居に、インテリ上がりの鳶頭（キナコの叔父）、ムショ帰りの悦治とその娘ツミ、軍事オタクの兄弟、受験勉強が趣味の偏差値オタクと個性的な面々が織りなすドラマですが、彼らの小難しい会話が独特の風味を効かせています。

そして彼らのところに持ち込まれる大仕事は巨大な現代彫刻を８階建てのビルの壁面に取り付けるというもの。他の大手が尻込みする中、制作作家の意気にほれ込みこの難事業に挑戦するのですが、おりしも梅雨のさなか日程も押し詰める中、雨天続きの天候は彼らの作業をさらに過酷なものにするのでした。

豆知識が得られるし会話も面白く、テンポもよくて、爽やかな小説です



俺、リフレ

リフレとは冷蔵庫のことで、無機物である冷蔵庫の視点で作家の伊作家の「家族愛と才能」が語られるなかなかの感動作です。登場人物は作家の伊作（作家才能・中）、その妻でイラストレーターの悦ちゃん（イラスト才能なし）、夏休み期間だけ伊作家に居候する小学生の光君（バイオリンの才能第・大）、そして人格をもって伊作家の面々を愛してやまない冷蔵庫のリフレ（人格があっても手も足もないので基本的には何もできない）です。

人間３人は、それぞれのレベルで、持っている才能の限界に苦悩し、人格が壊れていくさまが、リフレの眼を通して刻々と描かれていきます。そして悦ちゃんは統合失調症を発病し、伊作は一家心中を図ろうというところまで追い込まれるのでした。ここまでの過程はホラー含みです。さてこの危機に心を悩ませ、伊作家を救おうとする冷蔵庫のリフレ。彼にできる唯一のこととは…というストーリー。

　途中までが重い感じなので、好き嫌いが分かれると思いますが、投げ出さずに最後まで読んでください。