われた魯山人　

前田義子　Noriko“Daisy Lin”Maeda

『われたときに器の命は終わるのでしょうか。 私は、そうは思いません。 われた器の命を生かせるかどうかは、用いる人次第なのです。 われた魯山人の器は、金継ぎをしてふたたび命を吹き込まれ、 以前にも増して美しくなって私のもとへ戻ってきてくれました。』 美しい道具たちは、使ってこそ、より、そのものの存在感が増してきます。 ミスリンが、京都や鎌倉、そして世界中から選りすぐり、日々の暮らしの中で愛でてきた道具の数々は、時として家族の思い出や、友人とのかけがえのないひとときを 共に過ごし、心の中に幸せな記憶を残します。 その道具たちは、壊れて傷ついたとしても、丁寧に修復されることにより、 その傷さえも歴史となり、味わいとなって、日常を、人生を、豊かに彩ってくれます。 『人であれ、ものであれ、形あるものはいつか必ず壊れ、失われる日がきます。 けれども人はどうしても、失いたくないという気持ちを強くもってしまうものです。 多くの人は傷つくことが怖いし、大切な人やものを失ってしまうことを恐れます。しかし、完全ではない自分や他人、あるいはものを受け止められる心を持つと、すっと心が楽になるはずです。 完全でないものは、こんなにも美しいのか。われた魯山人の茶碗は、それを気付かせ、励ましてくれるものでした。不完全であることは、欠点ではありません。 不完全であることは、可能性を秘めていることなのです。』 われた魯山人の器を通して、ミスリンが感じた ものの命、つくり手のものへの愛、 また、ものを通して見えてくる、人と人との気持ちの繋がりを綴った言葉が、 研ぎ澄まされた美意識とともに 心に温かく染み入ってくるフォトエッセイです。 第47回造本装幀コンクールにて、最高位の文部科学大臣賞と出版文化国際交流会賞をダブル受賞! 装幀、デザイン、編集を含めた、本としての美しさが評価され、ドイツで行われる「世界で最も美しい本」の日本代表として出品されます!

Daisy Lin
foxy