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　アンマーとぼくら

「リョウ」は小学生の時に実母と死別し、父親の再婚相手が「晴子さん」です。つまり晴子さんは継母であり、リョウは晴子さんをなかなかお母さんと呼べません。

　そんな幼少期を過ごしたリョウも32歳。父もなくなったため、一人で沖縄で暮らす晴子さんのもとを久しぶりに訪れて2人で三日間の沖縄をめぐる話です。おかあさんの案内で一緒に家族の思い出の地などを廻り、子どもの頃は言えなかったことや家族の思い出のエピソードを回想するうちに、２人の微妙な関係が明らかにされます。ところが旅行の途中でではタイムスリップ的なSF要素が登場したりして、この話はどこへ行くのだろうと読者を困惑させます。さらに終盤ではリョウが、やたら3日の期限を気にしているのがこれまた読者を不安にさせます。しかしこれらの不安要素はきれいなオチに繋がってます。

継母と息子の沖縄巡り記なのですが、沖縄愛がふんだんに盛り込まれており、 その歴史と美しさを背景に描かれる家族の思い出の描写は秀逸です。



キャロリング

　俊介の勤める子供服メーカー「エンジェル・メーカー」は小規模ながら暖かい職場です。しかし資金繰りの悪化から今年のクリスマスに倒産が決まるのです。俊介が気にしているのは同僚の元カノ・柊子。自分の不幸な生い立ちが原因で別れた彼女ですが、倒産のクリスマスまでにこの気持ちに決着を付けなければもう会えないのでした。

一方、子供服を扱うエンジェル・メーカーに併設していた小学生のアフタースクールの生徒・航平は両親が別居中。両親に元通り仲良くしてほしいと願って、離婚寸前の父親に会いに行きたいのですが母親に反対されています。おせっかいなことに父親に会いに行く手伝いをしている柊子に引きずられて俊介も母親に内緒で航平の応援するのでした。しかし、航平の父親・祐二はヘタレ男で、復縁などはほぼ無理の状態。そんな中、絋平と柊子は誘拐事件に巻き込まれてしまいます。

　　本小説の特筆すべきところは誘拐犯であるヤクザを含めて登場人物全てがいい人であること。従って読後感もいいことです。